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珈音[kanon]:佐藤 毅

  • 2010.11.23 Tuesday
  • かさね ひと


  • ナマハゲで有名な男鹿半島。日本海へ突き出たこの半島の北部に、五里合[いりあい]という地域がある。その五里合で、代々稲作を営んできた琴川地区。海と田園が風景の中に同居するこの琴川の一角、海沿いを走る国道から、田園の合間を縫うように続く市道を少し行ったところに[こおひい工房 珈音]はある。






    2008年から生まれ故郷であるこの場所で珈音を営む佐藤くんとは、今年のGWに横手市十文字のデリカテッセン紅玉で行われた「旅するマーケット」で出逢った。佐藤くんは珈琲店として出店していたのに加え、コントラバスの見事な演奏も披露されていて、そのあまりに美しく力強い姿がとても印象に残っている。

    佐藤くんとは、その後も色々な場所で何度か会うことはあったが、珈音には行ったことがなく、いつか行ってみたいと思っていたところ、先日、念願叶ってようやく訪れることができた。








    店内には年月を経たものだけが醸し出すことができる艶気漂う重厚な柱と梁。聞けば、3年前に建てたこの店で4代使ったことになるのだとか。100年以上に渡り先祖から代々受け継いできた大きな財産。木の命を頂く、その感謝と、神にも似た大きな存在に見守られながら暮らすこと、そんなメッセージが伝わってくるかのよう。






    この場所で、佐藤くんは一粒一粒の豆を丁寧にハンドピッキングで選定し、丁寧に丁寧に焙煎していく。珈琲の香ばしい薫りと店奥にある薪ストーブの暖かさとで、10人も入ればいっぱいの店内は心地よい幸せな空気に溢れている。




    佐藤くんは、20代〜30代の農家や画家、料理人など幅広い人脈で構成されている「茄子地人協会」というグループのメンバーで、今年4月から「琴川すげ笠伝承塾」を開催し、「琴川のすげ笠」の保存活動にも取り組んでいる。この地区もやはり高齢化が著しく、そのため男鹿市の文化財にもなっているこの「琴川のすげ笠」は平成19年に一度途絶えてしまったそうだ。昔からこの地域で盛んに作られていたすげ笠をもう一度復活させようと、彼らは材料となるすげの育成から取り組み始めた。「稲作中心のこの地域でもやはり耕作放棄地の課題がある。すげを育て、すげ笠を作ることで、多くの農地を農地として後世に残していけたらと思う。」そう語ってくれました。


    すげ笠の下地となる竹骨[※写真は製作途中の小さいサイズ]


    縁には角館の樺細工大館曲げわっぱにも使われる桜の皮が施されている「琴川のすげ笠」


    編み込み方次第で新たな表情が生まれる。


    留めが3つというのも珍しいとのこと。これも琴川の特徴。必然が生み出す機能美。


    秋田県内各地には、江戸時代の紀行家、菅江真澄が訪れた足跡がいくつもある。ここ琴川を訪れた日記も残っていて「琴川で花見をした」とあるそうです。この地域の美しさを、その行動が象徴している。




    大政奉還、明治維新、そして度重なる戦争を経て迎えた高度経済成長期。私たちは多くを手に入れ、そして同時に多くを失った。それは写真のような何でもない風景の中にも脈々と受け継がれてきた文脈とでも言うべき地域のアイデンティティ。経済と利便性を求め、村を出て都市に暮らす、自由と引き替えに得たものと失ったもの。それらを否定するつもりはないし、その恩恵すら受けているのだから、とやかく言うのも筋が通っていないかもしれないが、あまりにも急速に、また面として大きく変わり過ぎてしまった気がする。

    時代が変化し、人々の暮らす様も変わったいま、あの頃に戻る、戻すなんてことはあまりにも非現実的だ。それでも、私たちの世代は求めている。私たちの先祖は、どんな想いでどんな暮らしをしていたのか、何を恐れ、敬い、大切にしてきたのか、そんな何かを取り戻したいような感覚と真剣に向き合おうとしている人は、若い世代を中心に確実に増えているように感じる。

    この五里合琴川にも、その息吹が確かに。








0/DATE:ZERODATE

  • 2010.11.11 Thursday
  • かさね ひと
  •  
    先週末の土日、秋田県北部の大館市へ行ってきました。北緯40度、大館盆地に位置する同市は、秋田・青森・岩手の北東北三県の要衝の地であり、縄文時代早期の遺跡も見つかるなど、古くから人々が定着していたようです。明治〜昭和にかけて、豊富な鉱物資源と天然秋田杉に恵まれた同市は、県北部の政治・経済・文化の中心都市として大きな発展を遂げました。しかし、高度経済成長期以降、鉱業と林業の衰退に比例するように、経済低迷・人口流出・少子高齢化という課題を抱えるようになり、今日に至ります。




    この大館市で、2007年から毎夏行われているアートプロジェクトが[ZERODATE]です。ゼロダテは大館出身のクリエーターらが自発的に立ち上げたアートプロジェクトで、世代やジャンル、社会的地位さえも超えた活動を展開しています。名前の由来は[0/DATE]、DATE[日付][ゼロ]にリセットし、もう一度何かを始める、新しい大館を創造するという意味が込められています。




    私とゼロダテとの出会いは、今年の年明け早々。先のブログの会場となった 3331 Arts Chiyoda のオープンを間近に控えた、同施設に入居する[ZAC TOKYO]の松渕くんがプロモーションのため秋田市を訪れていた際、ココラボラトリーの笹尾さんから紹介されたのがきっかけでした。東京における秋田の新たな拠点、民間によるオルタナティブな秋田を提示していきたいというそのコンセプトに共感し、それ以来、密に連絡を取り合うようになりました。




    東京のZAC TOKYOと共に、このZERODATEの拠点となっているのが大館市の中心部に位置する大町商店街の空店舗をリノベーションしたスペース[ZERODATE Art Center=通称:ZAC]です。先週末は、このZACにてこの夏から始まっている新たなプロジェクト[秋田若手アートネットワーク]のミーティングがありました。






    当日は、県内外ゼロダテスタッフ、関係者の他、横浜で注文家具製作の工房を構え活動する秋田県能代市出身の湊くん秋田公立美術工芸短期大学で学ぶ金子さんも参加し、まち歩きマップの作成についてや、地元の伝統工芸「大館曲げわっぱ」との新たな商品開発についてなど、年度内の取り組みについて話し合いが行われました。






    翌日曜日は、メンバー全員で同じく大町商店街にある「大館曲げわっぱ体験工房」へ。




    ここで[大館曲ワッパ協同組合]の佐々木さんから、大館曲げわっぱについての説明を受けながら展示品を一通り視察。その後、製作のポイントや業界の現状、今後の可能性などについてなど、たくさんのお話を伺うことができました。


    屋久杉に興味津々なゼロダテの松渕くん


    右が佐々木さん、左がゼロダテの石山くん、中央が湊くん


    秋田公立美術工芸短期大学の金子さんと佐々木さん


    佐々木さん自身も職人で、以前から新しい作品づくりに果敢に挑戦されてきたということもあって、私たちの試みもすぐに理解して下さり、とても気さくに、そして細かいことまで丁寧に教えて下さいました。ゼロダテによる曲げわっぱ製作に確かな可能性を感じられた、収穫の多い出逢いとなりました。




    その後、まち歩きマップ製作チームと別れ、松渕くん、湊くんと大館郷土博物館へ。ここは旧・秋田県立大館東高校の校舎を活用した建物で、大館の自然・産業・歴史・民俗・美術工芸など、大館の歩み、風土と文化を知るための資料が展示されています。




    3階に曲げわっぱ展示室があり、私たちの目当てだった江戸時代の曲げわっぱは、残念ながら展示されていませんでしたが、数々の賞を受賞した作品郡や、ちょっと変わった作品など、新旧の作品が一堂に展示されていました。(※購入は出来ません。)


    「やりすぎ」感が漂う巨大曲げわっぱテーブル


    曲げわっぱではないですが、秋田杉の美しい木目が最大限に活かされた盃


    実は、私は大館ととても縁が深く、と言うよりも両親が大館出身(母は旧・比内町ですが)なので、私には大館の血が流れています。こうしてゼロダテの人達と出逢い、両親が生まれ育った大館という地で一緒に取り組めることが本当に幸せでなりません。






    この夏、ゼロダテは大館駅前の旧映画館「御成座」を復活させ、新たな活動拠点に加えるべく取り組みを進めています。課題の多い建造物ではありますが、重ねた歴史の分だけ、ここを訪れた人達の想い出の分だけ積み重ねられた、この独特の雰囲気は、唯一無二のものと言って過言ではないと思います。

    大館の地域資産という範疇を超えた秋田の資産として、十分過ぎるほど、訪れた人々を一瞬にして虜にしてしまうだけの魅力がここにはあります。ぜひ多くの方に実際に足を運んで見に来てもらいたい、そして御成座を、ゼロダテの活動を、応援してもらえたら大変嬉しく思います。








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